命に三つの鐘が鳴る Wの悲劇'75

命に三つの鐘が鳴る Wの悲劇'75

再起動した古野まほろの二作目。「命に三つの鐘が鳴る」というタイトルの意味はいまいちわからないが、まあいい。
前作の「群集リドル」が天帝シリーズの数年後を舞台にした天帝シリーズの主人公たちの後輩が主人公の話だったが、今回は、天帝シリーズの半レギュラーキャラの中でもっとも父性と常識に溢れた二条警視正の過去話だ。いつものようなオノマトペや妄想、掛け合い、ガンダム、が鳴りを潜め、普通に警察小説になっている。これに先立って、といってもかなり前だが、高校生時代の二条さんを主人公にした短編も発表されてるが、これは今作よりも天帝シリーズの雰囲気に近いと言うかより幻想小説成分が強いのだけれど、それで高校生の闘争を扱っているから恐ろしい。そして今作では高校・大学と闘争に身を投じた二条さんが警察に就職して、自首してきた学生時代の同志だった親友とスチールデスクを挟んで事情聴取しては、その粗を探しては、再聴取、粗探し、再聴取、というお話です。
それにしても二条さんは報われません。「天帝のはしたなき果実」では親友に死なれ、その真相を知らないまま「天帝のつかわせる御矢」ではひとり戦火に晒される大陸に残り、「天帝の愛でたまう孤島」では出番が無く、「天帝のみぎわなる鳳翔」ではひとり大陸で諜報活動に励み出番は電信での報告のみ。実に哀れな人です。そして今作でも実に悲しい結末に晒されます。
それにしても、主人公なのにここまで脇役っぽいってのもなんだかなあ。短編でもそうだったけど、基本的にこの人は、人間関係では中心付近にいるのに、ドラマ(と言うか事件と言うか)じゃ必ず部外者なんだよな。主人公となってもそれが変わらないのはどうかと思う。なんにせよ、苦労してそうだなあ。